●「雷とふんどし」現代標準語 version

X(旧ツイッター)で民話について呟いたところ、名古屋在住の方から意味がわからないとのお声をいただきました。それもそのはず、実はあえて現在ではほとんど使われていない名古屋弁の1つ「名古屋上町(うわまち)言葉」で書かれているんです!「消えゆく文化を残したい」との思いから、忘れ去られようとしていた地元に伝わる民話をこの美しい名古屋上町言葉で綴り、民話に出てくる「サラシ」にちなんで手ぬぐいを作成し、銭湯のリニューアルオープン記念時にお客様に無料でお配りいたしました。

実は、名古屋弁には「上町言葉」「下町言葉」「武家言葉」など様々な種類があります。そして、「名古屋上町言葉」は京都の「京言葉」と大阪「船場言葉」と並び、日本三大美方言と呼ばれる上品な言葉。今日私たちが名古屋弁と呼んでいる言葉は「下町言葉」をベースとし、地域言語や標準語とのミックスが進んだもの。少しずつ濃い名古屋弁を話される方が少なくなっている中、大河ドラマなどでネイティブのイントネーションに限りなく近く演じられている役者さんの姿をお見かけするとつい頬が緩んでしまうのは私だけでしょうか。

現代標準語訳をお読みいただく前にもう1つ。この民話の主人公はサラシ屋さんなのですが、「サラシ屋さん」と聞いたら、どんなお仕事を想像されますか? SNSなどで情報を拡散する人のことではありませんよ(笑)。今ではあまり耳にすることがなくなってしまった職業の1つですが、辞書には「〘名〙綿布や麻布をさらすことを業とする家。 また、その人。 また、さらし木綿の行商人」と、書かれています。つまり、木綿を日光浴「天日干し」させる人のこと。日本手ぬぐいの生地は、綿100%の糸をたて・よこ交互に織った平織の生地。中でも、経と横の糸隙間が広めの「さらし木綿」は、丈夫で摩擦に強いことに加えて、通気性と速乾性に優れているのが特長です。手ぬぐいを作るプロセスの中で、染める前に発色を良くするためにさらし木綿を天日で干すんですね。

以上を踏まえて、ぜひ名古屋上町言葉に触れてみてください🤗 現代名古屋弁のイントネーションで音読してみるのも一興です。(父から聞いた内容を頼り書いているので、記憶違いをしている箇所があるかもしれません。もし間違いがありましたら是非ご指摘ください!)

今は TED 登壇などでも活躍されている Vocal Impact Production 創設者 Dr. Laura Sicola に監修いただいたEnglish Versionは こちら から。

むかしから ごきそは だゃあちで みずがええ。
ほんだで さらしやさんが ぎょうさん おりゃあたんだわなも。
昔から御器所は台地で水がきれいです。
なので、さらし屋さんが大勢いらっしゃいました。

おひゃくしょうさんより あさはよ おきて、
いっしょうけんめいに、さらしをほしとりゃあした。
お百姓さんよりも朝早く起きて、
一生懸命にさらしを干していらっしゃいました。

―おてんきのかいわ―お天気の会話

[晴]
ふんどしがほしたるでなも きょうは はれだわぜえも。
雷さんが ねとりゃあすで ちゃっと しごとやろみゃあか。
褌(ふんどし)が干してあるから、今日は晴れですね。
雷様が寝ていらっしゃる間にさっと仕事を終わらせましょう。

[雨]
ふんどしが にゃあで きょうは あめだわなも。
ガラガラ ピッシャン
雷さんが おこっとりゃあすで だちかん だちかん。
褌が無いから、今日は雨が降りますね。
ガラガラ ピッシャン(雷のなる音)
雷様が怒ってらっしゃるから、良くない、良くない。

さらしを雷のふんどしに みたてて
ごきその みんわが できたんだぜえも。
さらしを褌に見立てて、
御器所の民話ができたそうな。

最後までお読みくださりありがとうございます。カアミイ君にはもう少し活躍いただきたいと思い、LINEスタンプ第一弾 販売中!売上は全て銭湯の修繕に充てさせていただきます。

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